社労士/社会保険労務士鈴木労務経営事務所(東京都新宿区)

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労働基準法の改正について

■平成16年1月1日の労働基準法の改正について

平成16年1月1日より、労働基準法の一部が改正されます。今回の改正は、さほど大きなものではありませんが、主な改正ポイントは下記の通りです。

[1] 有期労働契約の上限期間の延長

従来まで、期間の定めのある雇用契約は、通常「1年間」の契約期間が上限とされていました(特定のプロジェクトのための採用等、特殊なケースについては「3年間」)。

今後は、通常の労働者についても「3年間」を上限とする雇用契約を締結できるようになりました(従来から3年間であったケースについては「5年間」)。

契約期間を設ける場合、通常、半年もしくは1年の契約を反復更新する場合が多く、おそらく今後もそうであることが予想されるため、この改正は実務的にはほとんど影響がないといえるでしょう。

<一口メモ>
期間の定めのある雇用契約は、原則として、その契約期間中にどちらか一方から解約することができません。例えば、1年契約の従業員を途中で解雇することはできませんし、従業員側も途中で退職することはできません(一方的な都合による解約の場合、解約側に損害賠償を請求できる)。

しかしながら、今回の改正の経過措置として、従来まで1年が上限とされていた従業員とそれ以上の契約を結んだ場合については、1年を経過した以降は従業員側からは自由に解約できることになりました(従業員が強制的に長期労働に課せられることを防ぐため)。

したがって、仮に、今回の改正を受けて従業員と3年契約を結んだとしても、従業員側は1年経過後は自由に退職できるのに比べて、会社側は3年契約に縛られるという、会社が一方的に不利な契約となってしまいます。

これは、今回の改正の盲点というべき部分ですので、「せっかく法律が変わったのだから」と安易に長期契約を締結しないよう注意が必要です。

なお、上記と関連して、有期契約の締結・更新・雇い止めの際に守るべきルールの基準が示されました。この基準には法的強制力はありませんが、<契約締結の際に「更新の可能性の有無、更新の条件」を明示する>といった、トラブルを防ぐ意味で当然に行なうべきである内容が中心です。

今後、期間雇用労働者の割合が高まることが予想されますが、今回の改正云々よりも、「何度も契約を更新していれば、実質的に期間の定めのない雇用契約とみなされる(労働者側が再更新を期待してしまう)」という大原則を忘れないことが最も重要であるといえるでしょう。

更新の際は、決して自動更新にはせずに、1回1回新たに契約書を作成し、今回が最後の更新である可能性があるという点を毎回本人に自覚させ、その際の判断基準についても具体的に示すことがトラブルを未然に防ぎます。

[2] 解雇ルールの明文化

従来まで、解雇については、一部の特殊な場合についてのみ禁止条文が存在し、それ以外については条文上は原則自由に行えることになっていました。

今回、労働基準法において<解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする>という文言が入り、解雇するには合理的な理由が必要であるとされました。また、就業規則や労働条件通知書において、「解雇事由」(どのような場合に解雇を行うか)を明示するように義務付けられました。

解雇については、禁止する法律が整備されていなかったものの、いざ裁判になれば、合理的な理由がない限り無効とされていたため、今回の改正は、実態としては何も変化がないといえます。

むしろ、実務的には、就業規則や労働条件通知書を作成する際に必要となる項目が増えたという部分に注意が必要です(就業規則がある場合、解雇事由は<就業規則の定めによる>で問題ありませんが、就業規則が無い場合、各労働条件通知書に解雇事由の記載が必要となりました(※注))。

(※注)
解雇事由はできるだけ具体的に、かつ、あらゆる状況を想定して網羅的に記載したほうが会社に有利となりますが、労働条件通知書を使用する場合、紙面スペースの問題と本人への印象(入社後最初に受け取る書面に、解雇事由がズラリと列挙されているのは決して気持ちのいいものではありません)を考えると限界があるかと思われます。

この点からも、作成義務の無い小規模事業所においても就業規則を作成しておいたほうが都合がよいのは明らかです。

なお、実態に変化がないとはいえ、労働基準法に明文化されたことにより、今後は、裁判にまでならずとも、労働基準監督署がより積極的に解雇問題に介入してくる可能性も考えられます(原則はあくまで民事不介入)。

今後、やむを得ず解雇をする場合は、退職後に労働基準監督署に駆け込まれぬよう、退職時によく従業員と話し合い、本人の納得を得るよう従来以上に意識する必要があるといえるでしょう。

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