アウトソーシングについて
※このページは、会社がアウトソーシングを検討される際に考えるべき点や注意するべき点をまとめたものです。
■アウトソーシングとは
「アウトソーシング」とは、外部資源活用のことを意味します。外部の会社が雇用している社員を派遣社員として受け入れることも、広い意味では雇用のアウトソーシングとなりますが、一般的には、外部の専門家に業務を委託するいわゆる「外注」のことを指します。
たとえば、ほとんどの法人において税金の決算処理は税理士に依頼していますが、これも本来的には自社で処理するものですので、アウトソーシングに入ります。
自社で業務処理する場合に比べて、アウトソーシングには様々なメリットがあるため、昨今、多くの会社において積極的に取り入れられています。
■アウトソーシングに適した業務
アウトソーシングといっても、何でもかんでも外部委託できるというわけではありません。当然、アウトソーシングに適した業務と適さない業務があります。
アウトソーシングに適した業務としては、「正社員に任せるまでもない定型的なルーティンワーク」「専門性が要求される業務」「月に数回しか発生しないような頻度の低い業務」といったものがあげられます。
具体例としては、
- ・オフィスの清掃
- ・設備のメンテナンス
- ・経理処理事務
- ・決算事務
- ・給与計算事務
- ・社会保険事務
といった業務があります。
(簡単にいえば、「全ての会社に共通している業務」です)
逆に、アウトソーシングに適してない業務には、「会社の機密や重要なノウハウに関連する業務」「経営者の考えが反映される業務」「現場にいないと処理できない業務」があげられます。
具体例としては、
といった業務があります。
(簡単にいえば、「各会社の特色が出る業務」です)
■アウトソーシングのメリット
アウトソーシングすることのメリットとしては、いくつかあります。
[1] 経費が削減できる
これは、最大のメリットです。
社長さんの中には「自社の社員にやらせたほうが専門家に頼むよりも安上がりですむ」と思っている方もいらっしゃいますが、実際には、自社社員で処理するよりもトータルの経費は大幅に下がります。これは、なぜでしょうか?
イメージ的には、外部の専門家に頼むと、高額の報酬を要求されるような気がするかもしれません。しかしながら、実際の専門家の報酬は、その専門性に比べて非常に安いのが通常です。なぜなら、専門家は、同じ関連の業務ばかり処理していることから、複数の顧客の業務をまとめて処理できるという処理効率上の利点があり、安い報酬でもペイしてしまうのです。
たとえば、給与計算事務について「給与計算なんか、市販のソフトを購入して自社で処理すればタダで済むよ」と考えている社長も多いのですが、これは大きな勘違いです。というのも、給与ソフトは、各種社会保険料率や税率の改正のたびにソフトのアップデートが頻繁に必要となり、年間の保守料は安いソフトでも3〜5万円もかかります。ところが、専門機関が複数の会社の給与計算を受注する場合、どんなに多くの会社の給与処理する場合もこの保守料が1社分で済みますので、1社あたりの保守料負担はとても安くなるわけです(ソフトの販売会社にしてみればいい迷惑でしょうが・・・)。これは、給与計算ソフトに限らず、総務業務用ソフト全般にいえることです(例えば、ワードなどは「Word95」を現在も使用していても特に問題ありませんが、経理ソフトや各種帳簿類のフォーマット集などは、定期的なアップデートをしないと使い物になりません)。
他に、役所に書類を提出するという作業を取上げても、同時に複数の会社の書類を提出することが可能となり事務負担は軽減されます。また、専門資格を持っている人が書類を提出する場合は添付書類を省略できたり、混雑する役所においてはわざわざ専門資格者専用の窓口を設置してくれている機関や、資格者の印鑑がある書類のみ郵送を受け付けてくれる機関もあり、専門家の場合はスピーディーに処理できる仕組みがあることも報酬を安くしている理由の一つです。
さらに、自社従業員で処理する場合の「見えにくい費用」に目を向けると、その差は歴然となります。
具体的には、まず、新たに従業員を雇った場合、「採用にかかる費用」「教育にかかる費用」がかかります。さらに、自社で雇用する従業員に支払う給与には、労働そのものに対する対価の他に、「通勤手当(交通費)」「各種社会保険料の会社負担分」「有給休暇中の給与」「残業時間中の割増賃金」、さらには「賞与(ボーナス)」「退職金」といった費用まで必要になることがあります。
その点、外部の人間であれば、上記のような費用が一切必要ありません。この差は非常に大きいといえるでしょう。
[2] 業務量の調整がきく
これも、非常に大きなメリットです。
何でもかんでも自社で処理しようとすると、どうしても組織が大きくなり過ぎてしまい、業務量の調整がきかなくなってしまいます。たとえば、繁忙期に備えて確保しておいた従業員を、繁忙期が終わると同時に解雇できるかというと、そうはいきません。また、個々の従業員にも生活があるので、特定の日に仕事が無くなったからといって、「今日はもう帰っていいよ」と従業員を帰すわけにもいきません。
その点、積極的にアウトソーシングをしておくと、組織のスリム化が図れますので、必要な時期に必要なだけ業務を外部に委託すればよく、無駄な人件費を節約できます。過剰な雇用をした場合に避けて通れない、いわゆる「仕事が無く座っているだけの時間」に賃金を支払うといった無駄がありません。
外部機関に委託していれば、仕事が無くなれば契約を解除すればよいですし、急激に仕事量が変化した場合も、契約を変更すればすみます。
[3] 業務処理能力の安定性
これは、一見、目立たないメリットですが、重要です。
従業員であれば、突然、退職してしまうこともありますし、女性の方であれば、いわゆる産休や育児休業に入ってしまうこともあります。せっかく仕事を覚えた従業員が職場を離れてしまうのは、会社としては痛い損失です。さらに、新たな従業員の確保や他の従業員への業務引継ぎにかかるコストというのは、意外に大きなロスです。
その点、外部の組織であれば、退職や休職の心配がありません(ただし、そこがつぶれてしまえば退職のようなものですので(笑)、安定した機関を見極めて委託するようにしましょう)。
さらに、専門機関であれば、恒常的に行われる法改正にも対応していますので、常に安定した業務処理能力を発揮してくれます。
[4] 社内での情報漏洩の防止
業務の種類によっては、社内の従業員に任せるのに適していないものもあります。
たとえば、給与計算事務などは、各従業員の家族構成や賃金といった個人情報を扱いますので、社内にその情報が広まってしまうと、「なぜ俺の給料はこれだけで、途中入社のあいつはこんなに貰っているんだ!!」という不満をはじめ、思わぬ事態を招きかねません。
その点、外部機関に委託していれば、そのようなトラブルを未然に防ぐことができます。
| [1] 〜 [4] の総論 |
ここまで読んでお気付きになったかと思いますが・・・、実は、経営者自身で業務処理すれば、上記
[1] 〜 [4] の問題は全てクリアできます。もし、経営者自らが各業務の専門家と同等の能力を身に付け、短時間でそれらを処理することが可能であれば、それが最も理想的な形であるのは間違いありません。
しかしながら、慣れない業務を処理するのは、本やインターネットで調べる必要もあり、思いのほか時間をとられてしまうものです。さらに、関連する法律の改正情報も逐一チェックしていては、とても本業である経営にあてる時間を確保することは不可能となってしまうでしょう。
経済学の用語として「機会費用」や「機会損失」という言葉があります(その行為を選択したことで失った利益の意味)。まさか、金銭が出ていかないから費用はゼロと考えている経営者はいないと思いますが、経営者は常にこの見えない損失を可視化する習慣をつける必要があります。
(もちろん、時間が余っているという経営者であれば、全てを自身で処理しても何も問題はありませんが、その場合、そもそも経営者の時間が余っているという状況自体が問題のような気がします・・・)。 |
なお、余談ですが、下記も外注する場合のメリットといえるものでしょう。これについては、経営者自身で業務処理する場合にもいえることです。
[5] 責任を外に出す
万が一、自社社員が行なった業務処理にミスがあった場合、その責任はどうしても使用者がかぶることになってしまいます。たとえば、税金の申告に誤りがあり、税務署から追徴課税を課せられた場合なども、その損失分をミスをした従業員から個別に徴収するわけにはいきません。その点、業務を外部機関に委託していれば、ミスによる責任は、全て委託先の機関にかかってくることになりますので、その分の損害を請求することが可能です。
また、各役所への申告内容に重大な誤りがあった場合、悪質な不正申告として問題となってしまうようなケースであっても、外注している場合は、会社と委託先機関の間の連絡がうまくいっていなかった可能性も考慮してくれるという期待もあります。
■アウトソーシングのデメリット
以上、アウトソーシングのメリットを並べてみましたが、もちろん、アウトソーシングにはデメリットもあります。
[1] 社内情報の外部への漏洩
アウトソーシングのメリットのCで社内での情報漏洩の危険性について触れましたが、業務を外注すると、逆に、社外に情報漏洩してしまうという新たなリスクも発生します。
この点については、信頼できる業者を選定する必要があるでしょう(なお、税理士や社会保険労務士といった士業には、顧客の秘密を守る義務が法令により罰則付きで課されています)。さらに、書類の保管状況やシュレッダーの使用状況も確認しておいたほうが安全です。
※「アウトソーシングに適した業務」のところで触れましたが、ライバル企業に洩れると経営に影響を及ぼすような企業秘密に触れる部分は、そもそもアウトソーシングには適しておりません。
[2] 社内ノウハウの空洞化
業務を外注すると、当然、社内にノウハウが蓄積されないことになり、その業務に関して社内のノウハウが空洞化してしまいます。
ただ、逆にいえば社外のノウハウに触れることができるわけであり、また、たとえ社内でノウハウと積み上げたとしても、担当社員が退職してしまえばまた振り出しに戻ってしまいます。逆に、末永く付き合える外部機関と密に連絡を取り合える環境が整えば、社内ノウハウを蓄積したのと何ら変わりない業務効率を半永久的に発揮することも可能です。
[3] 余剰社員の発生
それまで自社で処理していた業務を新たにアウトソーシングする場合、当然、その業務を担当していた社員が宙に浮いてしまい、業務が無くなってしまいます。これは、それまでアウトソーシングに消極的であった会社が、そのメリットに気付きアウトソーシングに積極的に取り掛かかろうとする時によく問題となる点です。
これについては、その社員の生活もありますので非常に難しい問題も含んでいますが、たとえばその業務分だけ週の労働時間を減らすか、または、企業の根幹にかかわるコア業務を担当してもらうというより積極的な解決法があります。
近年、アウトソーシングを受託する業者は増えていますし、益々アウトソーシングを活用する場面は増えてくることが予想されます。今後、社員を採用する際は、あらかじめこのことも念頭において慎重に行なうべきでしょう(労働法や民事上の問題から、一度雇用した社員は簡単には解雇できません)。
■まとめ
以上、アウトソーシングのメリット・デメリットをみてきましたが、アウトソーシングはうまく利用すれば非常にメリットが大きいといえるでしょう。
余談ですが、アウトソーシングという考え方が現在のように一般的で無かった頃、定型業務はパート社員で処理するという会社が大半であり、外注を請負う機関(アウトソーサー)の数はそれほど多くありませんでした。現在は、アウトソーシングの流行を受け、法人個人を問わず外注機関はかなり多くなり、自由競争が活性化されていますので、それぞれの業者をよく選んで委託しましょう。
委託した業者に不満がある場合は、いつでも契約を解除し、業者を変更することが可能です(従業員との雇用契約とは違い、外注業者との委託契約は法律による規制が一切ありませんので、当事者間で特別な契約を結んでいない限り、いつでも将来に向かって自由に解約することができます)。
| おまけ |
上記の注意点として、何ヶ月前に申し出れば委託解除できるのか、また、その場合の業務の引継ぎ方法についても契約前に確認しておいたほうがよいでしょう。
たとえば、税理士の世界では、これだけパソコンが普及しているにもかかわらず、未だオフコンと呼ばれる会計専用機を使用している事務所も多く、途中で委託を解除しようにもデータの引継ぎができずに、次の決算までは半ば強制的に受託せざるを得ないということが往々にあります。
さらに、給与計算については、決算のようにキリのいい時点がありませんので(年末調整を境にしても、労働保険料の計算は年度単位のため)、いつまでたっても引継ぎができないという事態もあり得ます。現在でしたら、とりあえずExelデータで貰えれば引継ぎは簡単にできますので、Exel形式でデータを出力できるかを確認するとよいでしょう(会計ソフトも給与ソフトも、なぜか、そのソフトしか取り込めない形式のファイルでないと出力できないものが半分くらいあります。もっと不思議なことに、値段が高いソフトは、ほとんどがそのソフト専用のファイルしか出力できません。ほんとに不思議ですが、理由はなんとなく分かります)。 |
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